キャットインストラクターが教える、猫との信頼関係の築き方

Jul 11, 2014 / Topics

Tags: column

Photo:Kazuho Maruo Edit&Text:Madoka Hattori

心理学のひとつである行動分析学を学び、キャットインストラクターとして動物病院や猫カフェでのセミナーをしている坂崎清歌さん(http://happycat222.com)。猫と人が互いに快適に暮らすためのトレーニングのひとつ、クリッカートレーニングについて伺いました。

―坂崎さんが主宰する「猫とのコミュニケーション教室」ではどういったことが学べるのでしょうか?

「私は猫には特別なしつけは必要ないと思っています。猫は適切な環境を用意してあげるだけで、上手に室内で暮らすことのできる動物です。よって、Happy Catでは“猫に健康で楽しく快適に暮らしてもらうために飼い主として何ができるか”という視点から、必要な知識を教えています。猫と上手にコミュニケーションを取るためには“猫の学習の仕組み”を知る必要があります。例えば“適切な環境”の“環境”には、飼い主のことも含まれます。猫に対する飼い主の適切な行動や反応が、猫の暮らしを快適なものにしていくのです。“猫に何かをさせる”のではなく、人間が“猫と暮らすために勉強する教室”と思っていただければいいと思います。そもそも教室を開くきかっけは、たまたま知ったクリッカートレーニングを、にゃんまるが気に入ってくれたことからスタートしました。〈クリッカートレーニング〉という名称ですが、いってみれば猫と楽しむゲームです。猫にとってこんなに楽しいゲームなら、多くの猫にこの楽しさを体験させてあげたいと思い、勉強を始めたんです」


〈メインクーンのだいきち〉


〈茶トラのちゃあ〉


〈キジ白のにゃんまる〉


〈黒猫のピコ〉

―クリッカートレーニングというのはあまり聞き慣れない言葉ですよね。どこで知ったのですか?

「たまたま本屋さんで『猫のクリッカートレーニング』という本を手にしたんです。1960年代にカレン?プライアという人が開発したトレーニング法を、行動分析学の杉山尚子先生が翻訳した本。その本には難しい専門用語などは一切なく、学習心理学や行動分析学を知らなくても簡単に読むことができ、すぐにクリッカーゲームを始められました。読み終わった次の日に始めて、すぐに私もにゃんまるもクリッカーゲームに魅了されました」


『猫のクリッカートレーニング』


〈クリッカー〉とよばれる道具


トレーニングに使うおやつ。カリカリを半分にしたもの。

―行動分析学には以前から興味があったのですか?

「11年前、飼っていた猫を病気で亡くした時、“自分の知識不足だったのではないか、もっとしてあげられることがあったのではないか”と、とても後悔したんです。猫について勉強できる場は当時も少なかったのですが、オープンスクールや猫の講座など、見つけたものはどんどん受講しました。その中で猫の写真講座も受講したのですが、写真を撮ることでより一層猫の行動を観察するようになり、それがその後のクリッカーゲームに活かされたと思っています。クリッカーゲームのコツはとにかく猫を観察することですから。クリッカーゲームをうちの猫たちと楽しむようになってまもなく、本を一冊読んだだけの自己流ではなく、もっと猫を楽しませてあげるためにちゃんと勉強したい!と思うようになりました。でも猫のクリッカーを教えてくれるところはいくら調べても見つけられなく……。仕方なく、犬のクリッカーの講座を受講し勉強を始めました。そこでクリッカートレーニングは行動分析学がもとになっていると初めて知り、行動分析学の本を読むようになりました。その後、縁あって杉山尚子先生に行動分析学を教えていただく機会を得て、自分でも教室を開くようになったんです」

―クリッカートレーニングは、具体的にどんなことをするのでしょうか?

「クリッカートレーニングは、ゲームとして猫と人が一緒に楽しめるものです。一般的にはトリック=いわゆる“芸”と呼ばれるようなことを猫に教えることができます。ですが、これは結果であって目的ではありません。例えば“お手”を教えるとします。猫が“お手”をしてくれたらとても可愛いですよね。でもこの“お手”ができるようになったことは可愛いだけではなく、前足を触られることが大丈夫になる、というトレーニング的な意味合いを持っています。前足を触られる→爪をにゅっと出される、と段階的にトレーニングを進めていくことで、爪切りされるのが大丈夫な猫、になっていきます。そのためには、まずは猫と一緒にクリッカートレーニングをゲームとして楽しみながら、人もトレーニングの腕を磨く必要があるわけです」

―食いしん坊の猫だと、ご飯をくれくれというアピールをすごくしますよね。ニャーニャーと鳴く姿に負けないようにと思っていても、ついついあげてしまうのですが……。

「そんな時こそまさにパズルフィーダーやクリッカーゲームがお勧めです。今はこちらの望んでいない行動=ニャーニャー鳴くことで猫は食べ物を得てしまっている状況ですよね? そうではなく、猫がこちらの望んでいる行動をしたら猫の望みを叶えます。“ニャーニャー鳴いても食べ物は出てこないけど、自分が何か頑張ることで食べ物が手に入る”と猫に教えるわけです。それがたとえどんな簡単なことでも、既にいつもしているようなことでも、できるだけ褒めて望みを叶えてあげる。猫に変わって欲しいなら、まず人間側が変わらないといけないんですよ」


〈パズルフィーダー〉

―深いですね。人間同士にもあてはまりますね。

「猫を変えようとするのではなく、自分自身の行動を変えれば、猫の行動も変わっていきます。例えば噛み癖のある猫がいたとして、噛んでから怒っても意味がない。噛むという失敗行動をさせている時点で、それは飼い主の失敗なんです。もしかまって欲しいから噛んでいた場合、噛んだことを怒ってもそれは猫を喜ばせていることになります。だから、そもそも噛ませないようにすることが大切。噛んでいない時にこそ、かまってあげてください。そうすれば、猫に“噛む”以外の行動で自分の望みが叶うことを教えてあげることができるんです。ダメな行動を怒っても、その行動をやめさせる事は一時的にしか出来ません。それよりもどんな些細なことでも褒めてあげることが必要です」

―褒めるというのは?

「一般的に褒めるというと“いい子だね”などの言葉をかけることかもしれませんが、猫にはそれでは通じません。トレーニングでいう“褒める”というのは、行動を増やすこと。自分が望んでいる行動が増えていなければ、それは褒めたことがきちんと伝わっていないということになります。例えば、猫がお手をした時に“よくやったね~”と撫でたとします。でもその猫がもし撫でられることを望んでいなかったら? 望んでいない、もしかしたらイヤかもしれない“ナデナデ”
のためにもう一度お手をしようとは思わないでしょう。“褒める”ことができるようになるためには、猫が本当に望んでいることを観察する必要があります。もちろん、おやつより撫でられるほうが好きな猫もいるわけで、食べ物をあげればいいなどという簡単なことではありません。一概にこのやり方をすればいいという方法があるわけではなく、とにかくその子の望みを叶えられるように観察することが大切です」

―猫の望みを叶えるということで言えば、室内飼いだとキケンなことは少ないと思いつつ、猫にとっての楽しみがあまりなく、ストレスになっているかもと思う時があります。

「室内飼育による退屈の軽減、という側面からもクリッカーゲームは非常に有効です。猫に楽しく過ごしてもらうためには、猫の狩猟本能をいかに満足させられるかに着目する必要があります。“自分が何かをしたら獲物(食べ物またはオモチャ)をゲットすることができる”と、感じることのできる遊びが猫には必要なんです。例えば、ご飯を食べるためにブロックをずらして遊ぶパズルフィーダーなどを使うのもよいですね。犬は破壊する危険もあるので市販品が良いですが、猫は手近にある箱やプラスチック容器などいろいろなものを使って簡単にパズルフィーダーを作ってあげることもできます。長時間家を空ける時に、いくつかパズルフィーダーを設置しておくと退屈を軽減してあげられるのでお勧めです」

―トレーニングをすることで得られる一番のよい点は?

「しっかりした関係性が構築できることです。いわゆる信頼関係ですね。よく信頼関係があるからトレーニングができると思われるのですが、トレーニングをすることで信頼関係ができあがるんです。自分の行動を褒めてくれたり、認めてくれる相手には好意を持ちますよね? そして好意があるから何かやってあげたいと思うようになる。これはどちらか一方のことではないんです。猫も人間側の行動を強化しているんですよ。自分が教えたことを猫が上手にやってくれたとしたら、それは褒められているのと同じ。“あなたの教え方が良かった、だからできるよ”という猫からのメッセージです。猫に認めてもらえたということ。こうやってお互いに認め合いながら関係を築いていくことで信頼関係はできあがっていくわけです」

―猫の“しつけ”というと主従関係が必要に感じますが、そうではなくお互いの信頼関係を築くためにトレーニングが効果的なんですね。

「トレーニングというと難しくとらえる方もいるかもしれませんが、猫との新しいコミュニケーション方法として、また猫と楽しむゲームとして、クリッカートレーニングを猫との生活に取り入れて欲しいです。問題行動があるからトレーニングをするのではなく、猫が楽しんでくれるから一緒にトレーニングを楽しむ。その結果、人間から見た時に問題だと思われていた行動も改善されていく。それが私の目指すトレーニングなのです」

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